難関資格の一つである税理士資格。
税理士というと男性をイメージする人が多いと思いますが、1科目から受験することができ、一度合格した科目に有効期限はなく、取得すれば一生ものの資格のため女性にもおすすめできる国家資格です。
そこで、この記事では
- 女性が税理士を目指すメリット
- 女性が税理士を目指すデメリット
- 受験期間を短縮するための方法
について紹介していきたいと思います。
女性が税理士を目指すメリット
女性が税理士を目指すメリットとしては以下の3つが挙げられます。
- 柔軟な働き方ができる
- 転職に有利
- ブランク後の再就職に強い
この後、それぞれについてもう少し詳しく説明します。
柔軟な働き方ができる
税理士は一度合格すれば一生ものの資格のため、生涯をとおして柔軟な働き方が可能です。
特に自ら動こうとしなければ同じ会社で安定して正社員で働ける男性と異なり、女性の場合は妊娠・出産という一大イベントがあります。
妊娠前は出産後もフルタイム復帰を考えていたけれど、自分の体調・子供の成長度合い・自分の気持ちの変化などで出産後に働き方を変えたくなるケースも少なくありません。
そのような場合、税理士資格を持っていればその時その時で柔軟な働き方が可能です。
以下は一例ですが、例えば結婚前に税理士資格を取得したと仮定すると、こんな働き方が可能です。
- 税理士資格取得後、中堅税理士法人へ正社員として入社
- 結婚後、キャリアアップのため大手税理士法人へ転職
- 出産後、育児に専念したくなったため退職
- 子供が幼稚園入園の頃に再度大手税理士法人の正社員として再就職
- 子供の頃受験をサポートするため忙しくない会計事務所へ正社員として転職
- 40~50歳頃に自由な時間を増やしたくなったため独立
上記の例では転職回数が40代前で3回と比較的多いですが、税理士業界の大手(Big4では特に)では転職は当たり前のため若いうちに転職回数が多くてもそこまでネックになりません。
もちろん1年も続かず事務所を転々としていれば責任感がないと見なされる可能性が高いですが、2~3年ごと、ライフイベント(結婚、出産など)ごとなどであればそこまで問題にはなりません。
実際、Big4を渡り歩いて3法人経験している人もいますし、Big4では出戻りもしやすいので2回外に出たけれど今回(同じ法人に)3回目の入社です、というような人もいます。(さすがにレアケースですが)
最終手段として独立できるのも、大きなメリットですよね。
税理士は定年がなく一生働ける資格なので、40代頃まで経験を積んだり人脈作りに専念し、40代で独立して70、80歳でもゆるく仕事を続ける、というスタイルも可能です。
転職に有利
税理士資格を持っていれば、転職に有利になるというメリットもあります。
現在税理士業界は人手不足なので、資格を持っていてある程度経験があれば転職先には困りません。
以下はここ10年ほどの税理士試験の受験申込者数の推移です。
令和4年度 | 36,852人 |
令和3年度 | 35,774人 |
令和2年度 | 35,135人 |
令和元年度 | 36,701人 |
平成30年度 | 38,525人 |
平成29年度 | 41,242人 |
平成28年度 | 44,044人 |
平成27年度 | 47,145人 |
平成26年度 | 49,876人 |
ここ数年は微増していますが、10年前と比べると明らかに減少しています。
ちなみに、国税庁HPには10年前からのデータしか残っていませんが、平成17年頃は55,000人程度の受験申込者数でした。
このように減少傾向が続いていますので、このままの状態が続けば税理士業界の人手不足もなかなか解消せず需要もなくならないのかなと思います。
ブランク後の再就職に強い
税理士資格を持っているとブランク後の再就職に強いというメリットもあります。
女性の場合は妊娠・出産という一大イベントがあるため、どうしても男性よりブランクが生じる可能性が高いです。
妊娠・出産以外にも、パートナーの転勤等で退職を余儀なくされるケースも少なくありません。
何も資格がなくブランク期間が数年あったり、再就職時に幼い子供がいる場合、再就職に苦労するケースがほとんどです。
しかし、税理士資格とそれまでに数年でも実務経験があれば、再就職で苦労しないだけでなく、複数ある候補の中から自分の希望の就職先を選ぶことが可能です。
実際、私も結婚後に夫の海外赴任に帯同したため、2年半ほどのブランクができました。
当時は20代でしたが本帰国時には30代に入っていたため再就職では苦労すると覚悟していたのですが、転職エージェントの人と面談したときに
有資格で2年ほどの実務経験もあれば就職先はどこでも選べるし普通にいけば採用されるので安心してください。
と言われ、そのとおり、第一希望の事務所に再就職することができました。
女性が税理士を目指すデメリット
女性が税理士を目指すデメリットとしては以下の4つが挙げられます。
- 試験勉強で無理をして体を壊す可能性がある
- 試験勉強と家庭の両立は難しい
- 激務で体を壊す可能性がある
- 結婚や妊娠・出産が遅れる可能性がある
この後、それぞれについてもう少し詳しく説明します。
試験勉強で無理をして体を壊す可能性がある
税理士試験は会計科目2科目、税法科目3科目の合計5科目に合格する必要があります。
1科目から受験できて一度合格してしまえば一生もののため挑戦しやすい資格ですが、その代わりに短くても3年、長い場合は10年選手という人も少なくありません。
また、勉強期間中も平日1~2時間、休日に3時間程度勉強すれば受かるというものではなく、3年で5科目合格する人は受験期間中は受験に専念し、平日・週末関係なく5~8時間は勉強しているという人がほとんどです。
それだけの長期間、ひたすら勉強し続けるというのは健康な人でもかなりの負担になります。
数少ない合格枠を他者と争うかたちになりますので、体力・精神力が必要です。
女性の場合、どうしても男性と比べると体力の面で劣るので、受験期間中に無理をしすぎると体を壊してしまう可能性があります。
試験勉強と家庭の両立は難しい
試験勉強と家庭の両立が難しいというデメリットもあります。
上記で、最短での合格を目指す場合、受験に専念し、平日・週末関係なく5~8時間は勉強している人がほとんどという話をしました。
学生や、独身で仕事もバイトやパート、契約社員で勉強する時間がたくさんある場合はそれだけ勉強することが可能ですが、結婚しているとただ勉強だけしていられる環境ではないですよね。
もちろん結婚していてもただ勉強だけしていられる環境の人もゼロではないと思いますが、かなりのレアケースです。
既婚だけれど子供はいないという場合も日々の家事や週末や連休に夫婦で出掛けることもあると思います。
また、子供がいると更に育児が加わってくるのでより勉強に使える時間が少なくなります。
これらのことを考えると、残り1~2科目なら家庭と両立しながらの取得も可能ですが5科目すべてを家庭と両立しながら取得するのはかなり難しいといえます。
激務で体を壊す可能性がある
税理士試験を終え、就職したら後は安泰、ではありません。
就職先によりますが、税理士は季節労働者なので基本的に繁忙期は激務です。
例えば私はBig4勤務時代は法人の申告メインの部署にいたのですが、12月~3月(長い場合は5月)が繁忙期で、特に1~3月は毎月上限MAXまで残業がありました。
夜中の2時頃まで仕事をしたり、タクシー帰りが続くときもありました。
最近は残業規制が厳しくなり月100時間、200時間など明らかに過労死レベルの働き方はできなくなりましたが、それでも平日毎日24時終業、そのまま休日も1日5時間勤務し12連勤、というような時期もゼロではありません。
そのため、税理士業界で働く場合、就職先を選ばないと激務に耐えられず体を壊してしまう可能性があります。
結婚や妊娠・出産が遅れる可能性がある
これは女性に限らずですが、税理士試験が長引くと結婚や妊娠・出産が遅れる可能性があります。
税理士試験は平日1~2時間、休日に2~3時間勉強すれば合格できるという試験ではありません。
その人の能力にもよりますが、受験に専念し、平日・週末5~8時間毎日休まず勉強してやっと1~2科目合格できるかどうか、という試験です。
そのため、結婚したり子供が生まれたら独身で勉強し放題の人とくらべて確実に合格は遠ざかってしまいます。
家事も育児もお出かけも何もしなくていいから勉強に専念してね!
と言ってくれるパートナーなんていたら奇跡ですよね。
そのため、結婚前から試験勉強をスタートしている人は5科目取り終わるまで結婚を後回しにしがちです。
本気で合格を目指す場合は結婚している場合ではないのでその選択は正しいのですが、結婚や妊娠・出産が後回しになってしまうというのはかなりのデメリットなのではないかと思います。
受験期間の短縮なら科目免除制度の利用がおすすめ
- 5科目すべてを受験する自信がない
- なるべく受験生期間は短縮したい
- 家庭と両立しながら税理士を目指したい
そんな場合は、試験科目免除制度の利用がおすすめです。
税理士試験には、一定の大学院に進学し、研究指導に基づく学位論文を国税審議会に提出し審査に合格した場合試験科目の一部を免除することができる制度があります。
詳しくは「改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&A|国税庁 (nta.go.jp)」を確認してください。
科目免除をする場合、以下の3つのパターンが考えられます。
- 税法に関する学位論文を執筆し、税法2科目を免除する
- 会計学に関する学位論文を執筆し、会計1科目を免除する
- 大学院を2つ卒業し、税法2科目と会計1科目の合計3科目を免除する
③の場合、一度の大学院進学で税法2科目と会計1科目を免除することはできないので、必ず2回大学院に入る必要があります。
大学院の費用はかかりますが、この制度を利用すれば最大で3科目を免除することができます。
実際、私は大学院に進学し、税法2科目を免除しています。
科目免除をした理由は、税理士を目指そうと決めた際、親の知り合いの税理士さんに話を聞きに行ったのですが、そこで
女性で5科目合格はなかなか辛い。過酷な数年(長ければ十数年)なので性格が変わってしまうかもしれない。
試験の合格はゴールではなくスタート。4科目合格者と科目免除の税理士登録者では雲泥の差がある。
早いうちに試験を終わらせたいと思うなら大学院に進学するのがベスト。
というアドバイスを受けたためです。
税法2科目を免除して残り3科目に合格し、税理士登録をした今、本当に大学院に進学してよかったと思っています。
大学院進学にはもちろんデメリットもありますので、まずはメリット・デメリットをしっかりと理解してどちらが自分に合っているか考えてみてください。
まとめ:女性が税理士を目指すメリット・デメリット
この記事では、女性が税理士を目指すメリット・デメリットについて紹介してきました。
女性が税理士を目指すメリット
- 柔軟な働き方ができる
- 転職に有利
- ブランク後の再就職に強い
女性が税理士を目指すデメリット
- 試験勉強で無理をして体を壊す可能性がある
- 試験勉強と家庭の両立は難しい
- 激務で体を壊す可能性がある
- 結婚や妊娠・出産が遅れる可能性がある
このようにメリット・デメリット共にありますが、ここで挙げているデメリットは工夫をすれば避けられるデメリットです。
激務で体を壊すというのは事務所によるので、激務ではない事務所を選べば問題ありません。
また、その他のデメリットについては科目免除制度を利用して受験期間を短縮することでまとめて回避することができます。
税理士を目指してみようか悩んでいる方はぜひ挑戦してみてください。