最近、受験者数が増加傾向で、ビジネスマンが取得したい資格1位2位を争うほど人気の簿記検定ですが、一方で
簿記3級は役に立たない。取得しても意味がない。
という声をよく聞くという事実もあります。
では、実際簿記3級は取得しても役に立たない・意味がないのでしょうか。
この記事では
- 簿記3級について
- 簿記3級が役に立たないといわれる理由
- 簿記3級を取得するメリット
について詳しく紹介していきます。
簿記3級について
まずは簿記3級がどのような試験なのか
- 簿記3級で学ぶ内容
- 合格までに必要な勉強時間
- 簿記3級の難易度
- 簿記3級の合格率
を詳しく紹介していきます。
簿記3級で学ぶ内容
簿記3級では、商業簿記といい、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能を学びます。
高度な会計知識とまではいきませんが、日々の取引を記帳し、適切かつ正確に決算書を作成することができるようになります。
また、自ら作成するだけではなく出来上がった決算書から企業の経営状況を読み解き、分析することができるようになります。
合格までに必要な勉強時間
資格の学校TACが公表しているデータによると、日商簿記3級の合格までに必要とされる勉強時間目安は、以下のとおりです。
勉強スタイル | 3級 |
独学 | 120~140h |
予備校利用 | 80~100h |
参照:簿記の合格率と難易度・勉強時間は?くわしく解説します!|資格の学校TAC[タック] (tac-school.co.jp)
また、通信講座で合格実績のあるスタディングでは、日商簿記3級の合格までに必要とされる勉強時間目安は以下のように設定されています。
勉強スタイル | 3級 |
独学 | 100~150h |
資格スクール利用 | 50~100h |
参照:簿記合格に必要な勉強時間とは|3級・2級・1級それぞれの難易度とあわせて解説 – スマホで学べるスタディング簿記講座 (studying.jp)
スタディングの方が勉強時間は短く設定されていますが、勉強時間目安はあくまでも目安で参考程度にしかなりません。
勉強前の理解度や勉強中の集中力、もともとの得手不得手などで人により必要な勉強時間は全く異なりますが、以下の時間が大体の目安になるかなと思います。
- 独学 120h程度
- 資格スクール利用 100h程度
簿記3級の難易度・合格率
商工会議所では簿記3級のレベルを以下のように定義しています。
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
”ビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」”ということからも分かるとおり、難易度は高くなく、完全初学者でも比較的取り掛かりやすい資格です。
他の資格でいうと、FP3級やITパスポートと同程度といえます。
また、直近5回分の簿記3級の合格率は以下のとおりです。
試験回 | 合格率 |
164回(2023.6.11) | 34.0% |
163回(2023.2.26) | 36.5% |
162回(2022.11.20) | 30.2% |
161回(2022.6.12) | 45.8% |
160回(2022.2.27) | 50.9% |
参考:簿記 3級受験者データ(統一試験) | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)
合格率50%を超えている回もありますが、直近3回はすべて30%代となっています。
資格試験においては一概に合格率が高い=簡単とはいえませんが、難関資格では合格率10%を切るものもあるため合格率30~50%というのは比較的合格を目指しやすい資格といえます。
簿記3級が役に立たないと言われる理由
簿記3級が役に立たない・取得しても意味がないと言われている理由としては以下の5つが挙げられます。
- 誰でも合格できると思われている
- 履歴書に書いてもあまり評価されない
- 簿記3級だけでは転職に有利にはならない
- 実務では即戦力としては弱い
- 簿記3級のみでは副業、独立は難しい
この後それぞれについて詳しく紹介していきます。
誰でも合格できると思われている
簿記3級は比較的難易度が低く、学生でも取得している人が多いため、「誰でも合格できる」と思われている傾向があります。
実際、簿記3級の合格率は30~50%と比較的合格を目指しやすい資格ではありますが、毎年50~70%は不合格者が出ているため当たり前ですが誰でも合格できる試験ではありません。
誰でも合格できる試験ではないのですが、そのイメージが先行して「簿記3級は役に立たない」に繋がってしまっている傾向があります。
履歴書に書いてもあまり評価されない
簿記3級は履歴書に書いてもあまり評価されません。
もちろん履歴書に書いていけなということはなく、取得しているなら会計業界の場合実力の指標になるので履歴書に書くべきですが、簿記3級だけの場合”ないよりある方がいい”程度です。
やはり簿記3級は難易度が低く、学生でも取得している人が多い資格のため、履歴書に書いて【評価される】のは簿記2級からです。
簿記3級だけでは転職に有利にはならない
簿記3級は履歴書に書いてもあまり評価されないので、もちろん転職時もそれだけで有利になるということはありません。
簿記の資格だけで勝負する場合は最低簿記2級、簿記2級がない場合は
- 簿記3級+実務経験
- 簿記3級+語学力
- 簿記3級+他の資格(業界にもよりますが、IT系や宅建、FPなど)
と、簿記3級の他にも何かアピールポイントが必要です。
実務では即戦力としては弱い
簿記3級のみの場合、会計業界での実務において「即戦力」としては弱いと言わざるを得ません。
商工会議所のHPに簿記3級のレベルとして以下のように記載があるとおり、簿記3級では”業種にかかわらず身に付けておくべき基本知識”を学びます。
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
そのため、会計とは全く別の異業種の場合会計の知識があることは付加価値になり得ますが、会計業界で即戦力となるためには最低でも簿記2級の知識が必要になります。
簿記3級のみでは副業、独立は難しい
簿記3級はそこまで難易度が高くなく、ビジネスマンだけでなく学生でも取得している人が多い資格で、独占業務もありません。
そのため、簿記3級のみでの副業・独立は難しく現実的ではありません。
もちろん副業や独立開業は自分が「やろう!」と思えばできるので不可能ではないですが、基本的に仕事がくることはないかなと思います。
唯一考えられるのは簿記3級を勉強している人向けに簿記3級を教えるという副業ですが、簿記3級は十分独学で合格可能な試験のため、副業として成り立つほどの需要はないと考えられます。
簿記3級を取得するメリット
これまで簿記3級が役に立たない・取得しても意味がないと言われている理由を紹介してきました。
それだけ見ると簿記3級なんて取得しても時間の無駄なんじゃ・・・と感じてしまいますが、もちろん簿記3級には取得するメリットもあります。
簿記3級を取得するメリットとしては以下の5つが挙げられます。
- 知識・教養の一つになる
- 異業界の場合付加価値になる
- 会計業界への適性判断ができる
- 上位資格への一歩になる
- 日常生活に役立てることができる
この後それぞれについて詳しく紹介していきます。
知識・教養の一つになる
簿記3級を取得することで、業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」を身に付けることができます。
具体的には、商業簿記といい、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能を学びます。
高度な会計知識とまではいきませんが、決算書を作成したり、決算書からその企業の経営成績を読み解いたり分析したりという知識が身に付きます。
合格者が多いといっても全ての人が持っている訳ではなく、会計業界以外では簿記の知識がある人はまだまだ少数派です。
そのため、簿記3級を学ぶということは知識・教養の一つとなります。
異業界の場合付加価値になる
会計業界では簿記3級のみの取得はあまり評価されない傾向がありますが、異業界では会計の知識を持っている人の割合が少なく、基礎的な会計の知識があることは付加価値となります。
例えば営業するにしても、会計の知識があることでより理論に基づいた営業を行うことができるようになり、特に経営者や経営に近い立場の顧客相手の営業の場合、会計の知識があることで一定の信頼を得ることができます。
会計業界への適性判断ができる
簿記3級で学ぶ内容はビジネスパーソンが身に付けておくべき会計の基礎的な知識です。
簿記3級はいくら難易度が低いとはいっても、「簿記」はある程度向き不向きがあるため、向いていない人場合どれだけ必死に勉強しても一向に合格できないということも十分あり得る試験です。
そのため、これから会計業界へ進みたいと考えている学生や、異業界から会計業界への転職を考えている人は、簿記3級を受けることで会計業界への適性判断ができます。
もちろん簿記3級が受かったからといって簿記2級やそれより上の上位資格(税理士や公認会計士など)に必ず受かるとは限りませんが、簿記3級すら合格できないようであれば会計業界へ進むのはおすすめできません。
上位資格への一歩になる
簿記3級の上位資格としては、簿記2級・簿記1級の他、
- 税理士
- 公認会計士
- 中小企業診断士
- USCPA(米国公認会計士)
- USCMA(米国公認管理会計士)
- EA(米国税理士)
などがあります。
簿記2級からは会計業界への就職・転職で有利になりますし、簿記1級は税理士試験の受験資格になります。
また、会計系の国家資格である税理士試験の会計科目には簿記論・財務諸表論があり、公認会計士試験の会計科目には財務会計論・管理会計論がありますが、これらの国家資格は難関資格と言われていて、予備知識ゼロでいきなり挑むのはかなりハードルが高いため、これら会計科目の原点となる簿記を学ぶことが難関資格への足掛かりになるといえます。
会計の知識に語学力が加わればUSCPAなど国際会計分野の資格を取得しグローバルに活躍することも可能です。
日常生活に役立てることができる
簿記3級の知識は日常生活にも役立てることができます。
例えば、簿記3級の知識を家計管理に応用することで、毎月どのくらいお金が入ってきてそのうちのいくら手元に残ったのか、実際の純資産(資産-負債)はいくらなのか把握することができます。
【イメージはこんな感じです】
資産→購入した家、株など
負債→ローン
売上→給与
費用→食費、交通費、通信費など
また、企業の財務諸表が読めるようになるため、株式投資をしている人はどの会社の株を買うかの参考にすることができます。(株式投資をするなら財務諸表を読めるようになるのはマストですよね)
簿記3級は独学で合格可能
簿記にはある程度向き不向きがありますが、比較的難易度の低い資格のため、十分独学で合格が可能です。
現在は授業受講・問題演習・模擬試験がすべて無料で受けられるオンライン講座やWEBサイトも充実しており、無料のサービスは怪しいと感じてしまう人も多いと思いますが、きちんとしたサービスを選べば完全無料でも合格を目指すことは可能です。
無料教材であれば途中でやめたとしてもかかった費用はゼロで何かデメリットがあるわけではないため、
”個人的に簿記が気になっているけれど、簿記3級は役に立たないという噂も聞くし勉強するか悩んでいる”
というような場合は一度無料サービスを利用してみるのもおすすめです。
まとめ:最初の一歩として簿記3級はおすすめ
簿記3級は役に立たない・意味がないと言われることがありますが、何か新しい知識を学ぶことはそれだけで意味がありますし、役に立つ場面もたくさんあります。
- 会計業界への就職・転職で有利になりたい
- 会計業界で即戦力として評価されたい
- 資格をとって副業で稼ぎたい
- 独立開業したい
という目的の場合、簿記3級だけでは取得しても意味がない(+@が必要)といえますが、簿記3級の取得にはメリットもたくさんあります。
特にビジネスパーソンとして身に付けておくべき最低限の基礎的な会計知識が学べるため、会計の最初の一歩として簿記3級はおすすめできます。
簿記を学んでみたいという人はぜひ挑戦してみてください。
また、簿記検定は2級までであれば独学での合格も目指しやすい資格です。
どうしても”簿記3級なんて”と思ってしまう人はいきなり簿記2級を目指すのも一つの選択肢かなと思います。