就職・転職に役立つ資格として人気の簿記検定。
ビジネスマン必須の資格の一つとも言われていることから、簿記を学ぶ人が年々増えてきていますが、「比較的難易度が低い」「独学でも合格を目指せる」と聞いていたのに、
いざ勉強を始めたら簿記3級が難しすぎて全然分からない!
誰でも受かるんじゃないの?
自分がバカなのかな?
と簿記3級でつまづいてしまっている、という人も多いのではないでしょうか。
確かに簿記3級は他の資格と比べても比較的難易度が低く独学で合格を目指しやすい資格ですが、誰でも受かるほど簡単な試験ではありません。
この記事では
- 簿記3級で学ぶ内容
- 簿記3級の実際の合格率
- 簿記3級を難しいと感じる理由
- 簿記3級でつまづいた場合の対処法
について詳しく紹介していきます。
簿記3級で学ぶ内容
簿記3級では、商業簿記といい、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能を学びます。
高度な会計知識とまではいきませんが、日々の取引を記帳し、適切かつ正確に決算書を作成することができるようになります。
また、自ら作成するだけではなく出来上がった決算書から企業の経営状況を読み解き、分析することができるようになります。
実は不合格者の方が圧倒的に多い
比較的受かりやすいというイメージが強い簿記3級ですが、実は簿記3級は合格者より不合格者の方が圧倒的に多い試験です。
以下は、直近5回分の簿記3級の合格率のデータになります。
試験回 | 合格率 |
164回(2023.6.11) | 34.0% |
163回(2023.2.26) | 36.5% |
162回(2022.11.20) | 30.2% |
161回(2022.6.12) | 45.8% |
160回(2022.2.27) | 50.9% |
参考:簿記 3級受験者データ(統一試験) | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)
合格率50%を超えている回もありますが、直近3回はすべて30%代となっています。
30~40%が合格するということは、逆にいうと60~70%が不合格になっているということです。
このようなデータからも、簿記3級は合格者より不合格者の方が圧倒的に多いということが分かります。
簿記3級が全然わからない!となる理由
簿記3級は合格者より不合格者の方が圧倒的に多い試験ですが、それでも比較的難易度は低いためしっかり勉強さえすれば合格できる可能性は高い試験です。
では、勉強しているのに簿記3級が全然わからない!となってしまう理由はなんでしょうか。
以下の4つの理由が考えられます。
- 初めて勉強する分野
- 実務経験がない
- 出題範囲改訂
- テキストが自分に合っていない
このあとそれぞれについて詳しく紹介していきます。
初めて勉強する分野
まず、簿記が初めて勉強する分野であるという理由です。
- 学校で簿記の授業があった
- 身近に会計業界の人が多くよく話を聞く
といった場合を除き、簿記は普通に日常生活を送っているだけではなかなか縁のない分野なので、「簿記検定を受験しよう!」と思って初めて簿記を勉強し始めた、という人がほとんどではないかと思います。
初めて専門的な分野を勉強する場合、全体像のイメージが沸かないだけでなく、基礎的な用語の意味も何も分からない状況です。
その分野の専門家がマンツーマンでしっかり教えてくれる場合は躓くことは少ないですが、簿記3級は独学で勉強する人も多いと思うので、初めて勉強する分野を独学で、となると最初は「全然わからない!」となってしまう可能性は十分あり得ます。
実務経験がない
実務経験がないということも簿記が全然わからない!となってしまう理由の一つです。
少しでも実務経験があれば、座学としての勉強は初めてという分野でも、勉強を進める中で
- これは実務でいうここの説明だな
- 実務でのあの作業はこういう背景があったのか
など、実務で経験している内容と照らし合わせながら勉強することができるので、知識の定着もスムーズにいきますが、実務経験がない場合は簿記の仕組みや全体像のイメージが一切できていないため、座学だけ学んだとしてもなかなか知識が定着せず、
テキストを読んだときはなんとなく分かった気がしたけど実際問題を解こうと思ったら全然わからない!
となってしまう可能性が十分あり得ます。
出題範囲改訂や試験制度の変更
年々出題範囲や試験制度が変更になっていることも、簿記が全然わからない!となってしまっている理由の一つと考えられます。
実は、簿記検定は2019年4月に出題範囲の改定が行われ、それまでは2級の範囲だったものが3級で一部出題されるようになりました。
また、日商簿記は2020年12月より2級と3級にネット試験が追加され、従来からの統一試験(ペーパーテスト)も2021年6月試験より出題形式が大きく変更されています。
更に実務では2021年4月から「収益認識に関する会計基準」が施行され、日商簿記3級と2級商業簿記では、2022年4月(2022年度)から「収益認識に関する会計基準」が試験で出題されるようになりました。
2022年度からの試験では試験範囲だけでなく試験時間・出題形式・問題の難易度も大きく変更されています。
ここまで毎年何かしらの大きな変更が続くのは珍しいですが、「試験時間の変更」や「出題傾向の変化」に柔軟に対応できていないと自分ではしっかり勉強しているはずなのに全然できない!(わからない!)となってしまう可能性はとても高いです。
テキストが自分に合っていない
使用しているテキストが自分に合っていないということも簿記が全然わからない!となってしまう理由の一つです。
資格スクールを利用する場合にはその資格スクール指定のテキストを使う必要がありますが、独学の場合は市販のテキストを自分で選ぶことになります。
簿記のテキストは様々なものが出版されていて、もちろんどのテキストを選んだとしても簿記3級合格レベルまでいくことができますが、どのテキストが合うかは人によって異なります。
一番最初はどれを選べばいいかもよくわからないという状況だと思うので、とりあえず売れてそうなものを選ぶのもありですが、暫くテキストを使って勉強してみて全然内容が頭に入ってこないという場合は使用テキストを変えてみるのもおすすめです。
簿記3級がわからない場合の対処法
これまで、簿記3級が全然わからない!となってしまう4つの理由を紹介してきました。
テキストが合わないだけなら使用するテキストを変えるだけですが、その他の理由による場合、なかなかすんなり解決!とはならないですよね。
そこで、ここからは簿記3級が分からない!となってしまった場合の5つの対処法を紹介していきます。
入門テキストを読む
まず、簿記が完全に初めて勉強する分野で、簿記3級の勉強を始めても全然頭に入ってこないという場合は、簿記3級より更に基礎レベルの知識が不足している可能性があります。
その場合は、いきなり資格の勉強を始める前に入門テキストを読むのがおすすめです。
こちらの入門テキストは以下のような特徴があります。
- 各PARTの簡単なポイントがマンガでわかる
- “簿記の用語”と“簿記のルール”を丁寧に解説
- 取引例や練習問題があり解きながら覚えられる
- デザインが親しみやすく楽しみながら読み進められる
- いかにも勉強!という堅苦しい雰囲気はなし
元全国経理学校協会の簿記能力検定試験作問委員である浜田勝義先生の本で、専修学校・大学講座・企業研修で簿記入門講座や簿記検定1~3級の講師を務めていた経験もあるため初学者にとってとても分かりやすい内容となっています。
また、簿記入門ではあまりにも基礎レベルなので、入門よりはレベルが高く、簿記3級よりは基礎的な内容を勉強したいという場合は、日商簿記3級の前段階である簿記初級のテキストを読んでみるのがおすすめです。
TAC出版で、簿記検定受験生の支持ナンバーワンの大人気シリーズ「スッキリわかる日商簿記」の初級対策本です。
テキスト+問題集の構成で簿記初級の対策本のため、理解度の確認のために簿記3級の前に一度簿記初級を受けてみて、合格して自信をつけてから簿記3級へ進むのもおすすめです。
答えを見ながら問題を解く
簿記3級のテキストを読むと理解できている気がするけれど問題を解くとさっぱり。。
という場合は、いきなり自力で問題を解くのではなく、答えを見ながら問題を解いてみてください。
基本的にどの問題集も答えだけ載っているわけではなく、なぜその答えになるのか解説が記載されています。
最終的に自力で解けるようになれば大丈夫なので、どうしても分からない問題は答えの解説を見ながら解き進めていくと、より知識が定着しやすいです。
解説のみで理解できれば2回目からは同じパターンの問題は解けるようになっていると思います。
また、解説を読んでもよく分からない部分については、一度テキストに戻って該当範囲の復習をしてから再度問題に挑戦してみましょう。
反復練習で手を動かす
簿記3級で学ぶ商業簿記は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能をいいます。
取引を記録・計算する技能なので、座学で理解するだけではなく、最終的にその技能を用いて自分で取引を記録・計算できるようになる必要があります。
商業簿記では仕訳をおこして取引を記録していきますが、素早く正確に仕訳をきるためには、とにかく反復練習をして体に覚えこませるのが重要です。
そのため、実際に問題を解く段階で全然わからない!となってしまった場合は、まずは実際に手を動かしてどんどん仕訳をきってみてください。
何度も反復練習を重ね体に覚えこませることで、頭で理解するだけでなくその技能を使いこなせるようになります。
簿記初級を受験する
簿記3級で躓いてしまった場合、日商簿記3級の前段階である簿記初級をまず受験してみるのもおすすめです。
日商簿記では、簿記初学者向けの入門級として、2017年から簿記3級の前段階である簿記初級が創設されています。
日本商工会議所のHPでは簿記初級と簿記3級のつながりが以下のように記載されています。
簿記初級を学ぶことで、3級の合格までどこまで近づいていますか?簿記初級では、経理担当者だけでなく広くビジネスパーソン全般を対象とすることを重視しているため、あえて決算の処理に関する部分を除いております。一方で、日商簿記3級では決算に関わる問題が必ず出題されており、しかも配点も相当高いため、3級に合格するためには避けて通れません。したがって、簿記初級を学んだからといってそのまま3級に合格できるわけではありません。しかし、簿記初級で複式簿記の骨格にあたる部分はすでに固まっているでしょうし、決算に至る前の日常的な経営活動に関する簿記の知識はかなり習得しているでしょうから、簿記初級で学んだ内容で3級の範囲の半分強はカバーされているのではないかと思われます。簿記初級に合格した段階で3級合格にかなり近づいていると考えてよいのではないでしょうか。
上記のとおり、簿記初級の内容だけでそのまま3級に合格できるわけではないですが、簿記初級を勉強することで複式簿記の基礎を身に付けることができるので、3級の範囲の半分は既にカバーできている状況で簿記3級の勉強を始めることができます。
簿記初級に合格できない人が簿記3級に合格することは不可能に近いため、簿記3級でつまづいてしまった場合、まずは簿記初級を受験してみてください。
資格スクールを利用する
独学で勉強していてつまづいてしまった場合、資格スクールの利用がおすすめです。
近年では完全無料で簿記3級が学べるオンライン講座なども充実していますし、オンラインでなくても市販の教材で独学で勉強する場合、資格スクールを利用する場合と比べてかなり費用が抑えられます。
しかし、やっぱり馴染みのない分野の勉強を進めるにあたり、資格スクールでプロの先生の講義を受けながら勉強するのと独学で一人でテキストを読み進めるのでは理解度、知識の定着までの時間が圧倒的に異なります。
通信講座であればスマホ1つで好きなときに授業を受けることができ、また、通学と比べると格安でプロの講師の授業を受けることができます。
独学で勉強していてつまづいてしまった場合には、諦める前に資格スクールの利用も考えてみてください。
まとめ:簿記3級が難しいと感じる理由と対処法
この記事では、簿記3級が全然分からない!となってしまう4つの理由と、簿記3級でつまづいてしまった場合の5つの対処法を紹介してきました。
【簿記3級が全然わからない!となる理由】
- 初めて勉強する分野
- 実務経験がない
- 出題範囲改訂や試験制度の変更
- テキストが自分に合っていない
【簿記3級がわからない場合の対処法】
- 入門テキストを読む
- 答えを見ながら問題を解く
- 反復練習で手を動かす
- 簿記初級を受験する
- 資格スクールを利用する
簿記3級は誰でも受かると思っている人も多いと思いますが、簿記3級は誰でも受かる試験ではありません。
相応の努力をしなければ誰でも落ちてしまう可能性がある試験です。
簿記3級の内容が難しすぎて全然分からないという場合は、まずは簿記の入門テキストや簿記初級向けのテキストを読んでみて簿記3級の前段階の基礎知識を固めるところから始めてみてください。
また、独学での合格は難しそうと感じてしまっている場合は、資格スクールの利用がおすすめです。
独学で合格を目指す場合と比べると若干費用はかかってしまいますが、通信講座であれば格安でプロの先生の講義が受けられます。
独学で何度も不合格になり毎年テキスト・問題集を買い換える必要がでてきた場合、通信講座で一発合格を目指した方がトータルの費用はかからなかった、ということになる可能性は十分あり得るため、独学での合格が難しいと感じた場合は諦める前に通信講座の利用も考えてみてください。