5大国家資格の一つで難関資格といわれている税理士資格。
中卒・高卒で税理士を目指したいけど、目指せるのか?合格可能性や合格後の就職先は?と、気になっている人もいると思います。
そこで、この記事では
- 税理士試験の受験資格
- 中卒・高卒税理士の就職先
- 中卒・高卒の場合の合格可能性
について紹介していきたいと思います。
税理士試験の受験資格
税理士試験の試験科目は会計学と税法に区分されますが、それぞれで受験資格があります。
会計学については、令和5年度の税理士試験(第73回)から受験資格の制限がなくなり、どなたでも受験が可能となりました。
一方、税法(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)については学識、資格、職歴といった様々な分野の受験資格が定めていて、いずれか一つの要件を満たすと受験が可能となります。
学識による受験資格
- 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した者
資格による受験資格
- 日商簿記検定1級合格者
- 全経簿記検定上級合格者
職歴による受験資格
- 法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
- 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
中卒・高卒の場合、学識による受験資格がないため、それ以外の項目で受験資格を得る必要があります。
(司法試験や公認会計士試験の短答式試験に合格すれば学識による受験資格が得られますが、あまり現実的ではないためここでは割愛します。)
おすすめは、職歴による受験資格です。
実は、税理士は税理士試験に突破しても、実務経験(2年以上)を積まないと登録することができません。
税理士の登録に必要な実務経験が積める場所としては次のようなものがあります。
- 税理士法人や会計事務所
- 一般事業会社の経理部門
- 国税専門官として勤務(税務署など)
つまり、これらの職場で2年間実務経験を積めば、税理士試験の受験資格と税理士の登録資格を同時にクリアできるんです。
その他、日商簿記検定1級に合格すれば資格による受験資格を得ることができるため、簿記が得意な人は簿記1級の合格を目指すという方法もあります。
簿記1級は税理士試験の試験科目である簿記論・財務諸表論に劣らない難易度のため職歴による受験資格を目指す場合と比べて難易度は高いです。
ただ、職歴による受験資格の場合は最低でも2年間は受験資格がありませんが、簿記1級に1年で合格できた場合、税理士試験受験までの期間を短縮することができます。
また、簿記1級と簿記論・財務諸表論は8割ほど試験範囲が被っているため、簿記1級に合格する実力がつけば税理士試験の会計科目についてはあと一歩で合格できるレベルに達することができます。
日商簿記1級の場合、工業簿記・原価計算が試験範囲に含まれています。この点が簿記論・財務諸表論の試験範囲と大きく異なるので、注意が必要です。
中卒・高卒税理士の就職先
中卒・高卒で税理士になった場合、主な就職先は以下が考えられます。
- 小規模の税理士事務所、個人の会計事務所
- 中小企業(事業会社)の経理・税務部
- 独立
Big4、大手・中堅税理士法人、大手事業会社は上記と比べると難しいかなと個人的には感じています。
この後それぞれについてもう少し詳しく説明します。
Big4、大手・中堅税理士法人、大手事業会社は難しい
まず、Big4、大手・中堅税理士法人、大手事業会社は他と比べるとやっぱりハードルが高いかなと思います。
Big4や大手・中堅税理士法人は一般事業会社と違って新卒採用の枠がかなり少ないです。
例えば、Big4だと法人事業部が一番のメイン部署になりますが、その部署で毎年の新卒採用が5人いるかどうかです。
表立って入社資格に「大卒」を挙げているところはないですが、大学・大学院卒(卒業後1~2年受験専念した人も含む)で英語に苦手意識がない人は「とりあえずBig4」という人も結構多いので、その中で採用枠を争うとなるとやっぱり学歴がネックになってしまいます。
大手事業会社は税理士に限らず、普通に大卒で受けても落ちる人の方が多いですよね。そのため、大手事業会社もある程度学歴がないと厳しいかなと思います。
Big4、大手・中堅税理士法人、大手事業会社の中では大手・中堅税理士法人が一番入社できる可能性が高いですが、
- 大手・中堅税理士法人にはBig4を落ちた人が流れていく
- Big4に入社できる学歴・能力がありながら大手・中堅税理士法人を選ぶ人もそこそこいる
ということを考えると、学歴がネックになる可能性は大いにあります。
小規模の税理士事務所、個人の会計事務所
小規模の税理士事務所、個人の会計事務所の場合、学歴がネックになることはそれほどありません。
実際に中卒・高卒で税理士をとって開業した人が所長の会計事務所もたくさんあります。
税理士業は定年がなく、平均年齢がかなり高いため高齢の所長さんの会計事務所も結構あります。
そのような会計事務所に入って所長の元で経験を積めば後継者となり最終的に所長になれるというケースも少なくありません。
中小企業(事業会社)の経理・税務部
また、中小企業の経理・税務部も大手事業会社と比べると学歴がネックになることは少ないです。
新卒採用と異なり転職の場合は学歴よりも実務経験が重視されるため、どうしても規模が大きい会社で仕事がしてみたい、という場合はまず中小企業の経理・税務部で経験を積んでからもっと規模が大きい会社に転職するのも一つの手です。
独立
独立は自分で開業するだけなので学歴は一切関係ありません。
中卒・高卒で開業してお客さんはくるの?と感じてしまう人もいると思いますが、税理士になってしまえばお客さんが気にするのは学歴ではなく
- 税理士資格をちゃんと取得しているか
- しっかり仕事をしてくれるか
- 親身に相談に乗ってもらえるか
どうかということです。
「税理士です」と名刺を渡されて、「大学卒業してますか?」なんて聞く人はほとんどいません。
独立して一人で仕事をしていく場合、学歴よりもコミュニケーション能力の方が重要です。
合格可能性
中卒・高卒でも一定の条件を満たせば税理士試験を受験することができ、就職先もあるということを説明してきました。
では、実際合格可能性はあるのでしょうか。
個人的に、税理士試験の合格に特に必要なのは以下の3つの力だと思っています。
- 粘り強さ
- 体力
- 覚悟
よほど優秀な人でない限り、1~2年ですべて合格する人は少なく、最低でも3年、長ければ10年近くかかる人もいます。
また、私の知り合い(税理士試験の受験経験もある公認会計士の人)で
税理士は努力で合格できる最高峰の資格
と言っている人もいたので、粘り強さ・体力・覚悟があれば合格可能性に学歴は関係ないかなと思います。
実際、高卒で5科目合格した人を1人知っています。
その人は4年間で簿記論、財務諸表論、法人税、消費税、相続税の5科目に合格していました。
まとめ
これまで、
- 税理士試験の受験資格
- 中卒・高卒税理士の就職先
- 中卒・高卒の場合の合格可能性
を説明してきました。
結論としては、中卒・高卒でも全く問題なく税理士を目指すことができますし、合格して税理士として活躍することができます。
税理士は一生ものの資格です。
税理士に興味のある人はぜひ税理士を目指してみてください。