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【税理士試験】大学院進学での試験科目免除のメリット・デメリット

【税理士試験】大学院進学での試験科目免除
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難関資格の一つである税理士試験には、大学院進学による試験科目免除制度というものがあります。

試験の長期化を避けるため、大学院への進学を考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では

  • 大学院進学による試験科目免除制度の概要
  • 試験科目免除のメリット
  • 試験科目免除のデメリット

について紹介していきたいと思います。

 

大学院進学による試験科目免除制度

 

税理士試験は会計科目2科目、税法科目3科目の合計5科目に合格する必要があります。

【会計科目】簿記論、財務諸表論の2科目

【税法科目】所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税のうち3科目

※所得税法と法人税法のどちらか1科目は必須

一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験してもいいことになっていて、大体の人が1年に1~3科目ずつ受験していきます。

1科目単位で受験できるため挑戦のハードルが低い税理士試験ですが、その分受験期間は長期化する傾向があり、早くて3年、長いと10年単位でかかっている人も少なくありません。

 

そんな長期化しやすい税理士試験ですが、実は一定の大学院に進学し、研究指導に基づく学位論文を国税審議会に提出し審査に合格した場合試験科目の一部を免除することができる制度があります。

詳しくは「改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&A|国税庁 (nta.go.jp)」を確認してください。

科目免除をする場合、以下の3つのパターンが考えられます。

  1. 税法に関する学位論文を執筆し、税法2科目を免除する
  2. 会計学に関する学位論文を執筆し、会計1科目を免除する
  3. 大学院を2つ卒業し、税法2科目と会計1科目の合計3科目を免除する

③の場合、一度の大学院進学で税法2科目と会計1科目を免除することはできないので、必ず2回大学院に入る必要があります

ちなみに、以前は税法の場合は税法3科目が免除、会計学の場合は会計2科目が免除になり、大学院に2回いくと1科目も自力で合格することなく税理士になれてしまうということがありましたが、平成14年に改正があり、現在は税法・会計学ともに必ず1科目は自力で合格する必要があります。

 

試験科目免除のメリット

 

大学院進学により試験科目を免除するメリットとしては以下の4つが挙げられます。

  • 受験期間を短縮できる
  • 判例の読み方に詳しくなる
  • 税理士試験科目以外の広範囲の勉強ができる
  • 人脈作りができる

この後、それぞれについてもう少し詳しく説明します。

受験期間を短縮できる

 

難関資格の一つである税理士試験は

  • 1科目から受験可能
  • 一度合格した科目は一生もの(有効期限なし)
  • 受験回数制限等はない

という特徴があります。

そのため、受験回数制限のある司法試験や、短答式試験合格の有効期限のある公認会計士試験(短答式合格後、論文式に2年間で合格できない場合、再度短答式の受験が必要)と比べると比較的挑戦しやすい難関資格となっています。

その代わり、泥沼にはまりやすく、税理士試験受験生の中には10年選手という人も少なくありません。

そのため、大学院に進学し試験科目を一部免除することで受験期間を短縮できるというメリットがあります。

 

判例の読み方に詳しくなる

 

大学院進学により試験科目を免除する場合、【研究指導に基づく学位論文】を国税審議会に提出し、審査に合格する必要があります

この研究指導に基づく学位論文を作成するにあたり様々な過去判例を研究し、どのような条文解釈が成されてきたのかを学ぶ必要があります。

記帳代行と簡単な申告書を作るだけならそこまで条文解釈の力は必要ないですが、複雑な論点や法令が改正された場合には正しい条文解釈の力が必要です。

また、経験する人は税理士の中でも極わずかですが税務訴訟などに携わる場合も過去の判例を読む力は必要です。

ただ税理士試験を受けるだけでは基本的に過去の判例に触れる機会はほとんどないため、判例の読み方に詳しくなるというメリットがあります。

 

税理士試験科目以外の広範囲の勉強ができる

 

大学院に進学するということは、ただ国税審議会に提出する論文を書けばいいわけではありません。

基本的には大学等と同様に必要単位数があり、複数の講義を受講し、中間テスト・期末テストがあります。

そのため、大学院に進学しなかった場合と比べて、税理士試験科目以外により広範囲の知識を習得することができます

私は会計専門職大学院に進学したのですが、管理会計、監査論、企業法など会計関連の授業や、経営戦略など経営関連の授業も受講しました。

 

人脈作りができる

 

大学院に進学した場合、人脈作りができるというメリットがあります。

進学率の高い大学と異なり、大学院となるとある一定のレベルで特定の分野を研究する人たちが集まります。

特に税理士の科目免除が可能な大学院の場合、会計専門職コースや税法コースを設置している大学院も多く、その場合基本的に生徒は税理士や公認会計士を目指している人が集まります。

大学院に進学しなくてもTACや大原など通学型の予備校に通っていればそこで人脈ができることもありますが、大学院で特に数十人と少人数で学生生活を過ごすのと比べると親密度が桁違いに違います。

私は卒業後は税理士法人勤務のため大学院時代の友人と一緒に仕事をするということはないですが、私の知り合いには大学院のときの仲間と一緒に会社を立ち上げたり一緒に仕事をしている人がたくさんいます。

特に会社を立ち上げたい、独立したいという願望がある人は人脈作りができるというのはとても重要なメリットになるのではないかと思います。

 

試験科目免除のデメリット

 

大学院進学により試験科目を免除するデメリットとしては以下の5つが挙げられます。

  • 数百万円の費用がかかる
  • 中間テストと税理士の本試験の日程が近い
  • 5科目合格者より知識が乏しくなる
  • 5科目合格者より粘り強さや根性は身につかない
  • 環境により肩身の狭い思いをする

この後、それぞれについてもう少し詳しく説明します。

数百万円の費用がかかる

 

一番大きいデメリットが、大学院に進学する場合数百万円の費用がかかるということです。

税理士の科目免除が可能な大学院は全国にありますが、大体100万~350万程度かかります。

以下は東京都の一部の大学院の卒業までにかかる費用をまとめた表です。(10万円以下四捨五入)

 

国立 筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 法学学位プログラム140万円
私立 東洋大学大学院 法学研究科 公法学専攻240万円
私立 青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科310万円
私立 明治大学大学院 グローバル・ビジネス研究科330万円
私立 日本大学大学院 法学研究科170万円
私立 東京国際大学大学院 商学研究科190万円

 

税法科目の場合2科目、会計科目の場合1科目の免除に数百万円です。

これを高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれですが、ぽんっと出せる人は多くないのではないかと思います。

 

中間テストと税理士の本試験の日程が近い

 

学校によっては本試験を考慮してくれるところがある可能性はありますが、基本的に大学院なので中間テストと期末テストがあります

大学と同様、中間テストの日程は夏休みに入る直前の7月中旬~下旬です。

大体税理士試験は毎年8月上旬に開催されるので、中間テストの1~2週間後が税理士の本試験というスケジュールになります。

税法科目のみで中間テストの勉強がそのまま本試験に役立つならいいですが、私は本試験の2週間前に監査論の監査基準を必死に暗記していました・・・

このように、学校によっては本試験に集中できない可能性があるというデメリットがあります。

 

5科目合格者より知識が乏しくなる

 

科目免除をした場合、5科目合格者と比べて知識が乏しくなるというデメリットがあります。

もちろん学校によっては税法関係の講義があり、大学院の授業で法人税法など学ぶことができますが、やっぱり本試験に合格した人としていない人では知識や習得度にかなりの差が出てきます。

試験に合格しているからといって仕事ができるわけではなく、税法は毎年改正があり税理士登録後も引き続き勉強が必要なため、実務経験を積むごとに知識の差は縮んでいきます。

しかし、働き始めのタイミングでは5科目合格者の方がスムーズに実務に入っていけるのは事実です。

 

5科目合格者より粘り強さや根性は身につかない

 

また、科目免除をした場合、5科目合格者と比べて粘り強さや根性が身につかないというデメリットもあります。

税理士試験は10年選手という人も少なくない試験です。

また、法人税法や相続税法などでは4科目合格者がごろごろいる中での勝負になる傾向が高く、その中で5科目分の合格を勝ち取ってきた人と比べると、科目免除者は粘り強さや根性が不足しているケースが多いです。

Big4でも5科目合格者と院免のどちらも社内にはいましたが、やっぱりバリバリ仕事をして上に上がっていく人は5科目合格者がほとんどでした。

 

環境により肩身の狭い思いをする

 

こちらは周囲の環境によりますが、周りに「院免は税理士とは認めない」という価値観の人が多くいる場合、科目免除をしていると肩身の狭い思いをすることになります。

面と向かって言ってくる人は少ないですが、やっぱり5科目合格者は5科目合格したことに誇りを持っている人が多いので、科目免除で税理士になった人を下に見ている人も少なくありません。

ただ、面と向かって言ってくる人はかなりの少数派ですし、他人になんと思われようと気にしないという人にとっては特にデメリットにはならないかなと思います。

また、個人的には一生合格できずに10年単位で受験生を続けるくらいなら、科目免除をして早く実務に集中した方がいいと思っています。

まずは5科目自力で目指してみるという姿勢も必要ですが、時間がかかりそうだったり途中で挫折しそうになったときは大学院進学を考えてみるのもおすすめです。

 

まとめ:大学院進学での試験科目免除のメリット・デメリット

 

この記事では、大学院進学により税理士試験の科目免除をするメリット・デメリットについて紹介してきました。

記事まとめ

試験科目免除のメリット

  • 受験期間を短縮できる
  • 判例の読み方に詳しくなる
  • 税理士試験科目以外の広範囲の勉強ができる
  • 人脈作りができる

試験科目免除のデメリット

  • 数百万円の費用がかかる
  • 中間テストと税理士の本試験の日程が近い
  • 5科目合格者より知識が乏しくなる
  • 5科目合格者より粘り強さや根性は身につかない
  • 環境により肩身の狭い思いをする

このように、大学院進学での試験科目免除にはメリット・デメリットどちらもあります。

大学院への進学を考えている場合は、メリット・デメリットについてしっかりと考え、より自分に合った選択をするようにしましょう。

個人的には、3科目(または4科目)からなかなか進まずそのまま諦めてしまうくらいなら大学院への進学をおすすめします。

科目合格者と税理士登録者では雲泥の差があります。

国家資格はまず合格してからがスタートなので、とにかくまずはスタート地点に立てるように使えるもの(制度)はすべて使ってしまいましょう。